10回のリハビリより、1回のお買い物
光プロジェクトは、専用ショッピングカートを使って買い物を楽しみながらリハビリができる「ショッピングリハビリ®」というモデルを雲南市に導入するなど、全国へ展開中の福祉業界の注目企業だ。
もともと作業療法士として病院でリハビリを担当していた杉村さん。寝たきり高齢者を前に自分の無力さを痛感。予防的なリハビリが必要だと、歩行器の研究を続けていた。ある時、カートを押して買い物を楽しむおばあさんを見て、アイデアが劇的にひらめき、企業を決意。病院を退職し、歩行を補助する「楽々カート」を制作。2017年9月に雲南市の商業施設にて事業を本格始動させた。
「ショッピングリハビリ®」は、週に1回、送迎付きで、商業施設内に設けたスタジオにて体操や運動などのリハビリを行い、利用者の健康状態をチェックしたあと、カートを使って施設内をウォーキングしながら買い物をするプログラムである。特徴的なのは、何より利用者が買い物という日常行為を「楽しむ」うちに、自然と2000~3000歩歩いているということだ。「つらい」「きつい」というリハビリのイメージを払拭する画期的な手法。利用者たちは季節の商品をチェックしながら、頭も体も活発に動かしていく。一方、約60人の利用者による買い物1回の単価は3738円(平成30年9月データ『月間シニアマーケット平成31年3月号』より)。商業施設にとっても大きなメリットがあり、地域経済の活性化にもつながっている。
さらに、「元気な高齢者が増えれば介護給付費を抑制することが予測される。高齢者の生活支援により、住み慣れた地域で暮らし続けてもらえる。」と杉村さんは言う。行政と手を取りあいながら、地域住民の新たなケアサポート方法を模索中だ。
雲南でのモデルづくりはチャレンジの連続。コンサル中心だった事業から、始めて実店舗を構え人を雇用。現場のスタッフが自分たちで考え動いていける職場を目指し、何でも言い合える雰囲気をつくっていった。今では杉村さん抜きでも現場を回していける自慢のチームだ。
杉村さんはこの「ショッピングリハビリ®」のノウハウを全国に横展開。外部企業と連携し、全国に営業をかける。メディアにも多く取り上げられて注目があつまり、北海道恵庭市、茨城県那珂市、埼玉県蓮田市、静岡県静岡市、山形県天童市、福井県勝山市・福井市とのプロジェクトが進行中だ。雲南モデルが今、全国へ広がろうとしている。
理想のアイデアを現実に、笑顔あふれる場を共につくる
-ともに福祉の現場で働いた経験から、ショッピングリハビリのアイデアに共感して集まり、運動指導や買い物中の見守りを担当し、今では自分たちで現場を切り盛りする女性二人に話を聞いた。
和久里さん:雲南で始まる新しい事業がすごく面白くて魅力的だなと思って、手をあげました。以前は理学療法士として病院でリハビリを担当していましたが、子育てもありしばらく専業主婦だったので、久しぶりの職場です。
赤名さん:以前は老人保健施設で作業療法士として働いていましたが、買い物がリハビリになるというアイデアが、私が目指していたものと重なり思わず応募しました。高齢者が施設に入る前に、地域密着型で継続的、予防的なリハビリが家から通いでできればいいな、と思っていたんです。
-理学療法士は、立つ・歩くなど体の基礎機能・基本動作の回復をサポートし、作業療法士は、入浴・食事など日常生活の作業のリハビリを担当する。「ショッピングリハビリ®」はリハビリ専門職でなくても実施可能なプログラムだが、二人はそれぞれ専門の知識と経験を活かし、介護予防のために効果的な動きを利用者に伝えている。
和久里さん:利用者さんは体に痛みがあり運転ができず、家にこもりがちな高齢者たちです。週に1回、同じメンバーで実施するので、お互いに顔見知りになって話をしながら買い物を楽しんでおられますよ。独居の方も多いので、コミュニケーションがたくさんとれるよう工夫しています。
赤名さん:ショッピングモールは、段差もなく空調も効いていて、刺激が多いのが病院や施設と違うところですね。並ぶ商品も日々変わりますし、偶然にも買い物に来ていたご近所さんと久しぶりに会って話をすることも多いです。
-始まって間もない事業だが、利用者さんの声から手ごたえとやりがいを二人は感じている。
和久里さん:「ここに来ることが生きがいだ」って言ってくださる方がいるんです。ちょっと落ち込んだ方でも、思いっきり笑顔で元気に迎え入れてあげ、「ああ楽しかったな」と思って帰っていただけるように頑張っています。
赤名さん:利用者さんも一人ひとり、その日その日で体調も違うので、注意深く見守りながら寄り添った対応を心掛けています。利用者さんと一緒に楽しみながらリハビリに取り組めていることがとっても嬉しいです。
Q&A 一問一答
Q 事業を通じて見える雲南市の特色はなんでしょう?
A 地域包括支援センターのケアマネージャーさんをはじめ、行政の方が親身に相談に乗ってくれて助かっています。NPOのおっちラボさん経由で、想いのある大学生がインターンに来てくれるのもうれしいですね。(杉村代表)
Q 今後どんなサービスをしていきたいですか?
A ショッピングリハビリ®をより多くの人に利用してもらいたいです。全国展開もですが、市内でも送迎時間の都合で対象となっていない遠方の地域にこそニーズがあります。本当に必要な人にこのサービスを届けていきたいです。(和久里さん・赤名さん)
こんな人と一緒に働きたい!
▷失敗を恐れずチャレンジできる人
▷プロデュース思考ができる人
チャレンジングな事業に取り組む職場ですので、ぜひ何かやりたいという想いがある方に来てほしいです。提案や工夫は大歓迎。利用者さんを元気づけるためにも、こちらも元気いっぱい、笑顔いっぱいでのぞみたいです。
企業概要
光プロジェクト株式会社
代表者 杉村卓哉
設 立 2014年9月
従業員数 7名
事業内容 ●ショッピングリハビリ®・楽々カートの開発
●事業の組み立てサポート、プロデュース
所在地 〒699₋1311
雲南市木次町里方30₋2 マルシェリーズ2階
電話番号 0854₋47₋7332
H P https://hikari-project.co.jp/
<取材時期>
2018年