永瀬紀之さん・ルナさんご夫妻
子どもが生まれ、子育てをしていく中で、都会での子育ての限界を感じるようになりました。都会に住んでいる人は子どもや周りに関心のない人が多く、生活環境でも緑のある場所が少なかったり、人やモノでごちゃごちゃしていたり…。田舎に行けばあたたかい人に溢れているのかな、子どものことをあたたかく見守ってくれるかな、と田舎への移住を真剣に考えるようになり、様々な田舎の移住情報を調べていました。移住を考え始めてから夫が島根県出身だということを知り、島根県を訪れることになりました。山陰地方は天候もどんよりとしたイメージでしたが、私が訪れた日は真っ青な晴天で、想像以上に心地よく、「ここで子育てしたい!住みたい!」と思い、次の月には夫の実家の出雲市へ引っ越していました。
  2014年に出雲市へ移住しましたが、雲南市に訪れることが増えました。雲南市大東町にある山王寺の棚田で『森のようちえん』に興味を持っている人たちが集まるイベントがあり、その時に松江市から雲南市へ移住し、山王寺で生活されている多久和さんにお会いしました。多久和さんは山王寺に人が集まる場所を作りたいと考えていて、自分たちはカフェを開きたいと考えていたので、多久和さんから「山王寺でカフェをやらないか」と声をかけていただいたご縁で雲南市へ移住することに決めました。そして2016年に『棚田カフェ』をオープンすることになりました。
  紀之さんー棚田カフェの運営開始から2年間は、ふるさと島根定住財団の地域づくり応援情熱人という制度を活用しました。現在は棚田カフェの運営だけでなく、雲南市の飲食企業『FELICE』のシェフとしても働いています。
ルナさんー都会に住んでいたことは飲食業が多かったですが、今は元々好きだった絵を仕事にしています。雲南市内外で開催されているイベントでワークショップを行っています。
  雲南市の定住企画員に空き家バンクの物件を紹介してもらっていましたが、最終的には多久和さんから紹介してもらった山王寺の家に決めました。決め手は、水回りが綺麗だったことです。特に改修も必要なく、すぐに入居できる状態だったので。
  今の仕事柄なのか、人との出会いは本当に多くて、毎日充実しています。おもしろい人や変わった人が多いですね。雲南市はUIターン者同士の交流がとても盛んな上に、地域で頑張っている人がたくさんいて、刺激をもらいます。自分たちでイベントを企画すると乗っかってくれる人がいて、そして自分たちが乗っかりたいと思うイベントも多いです。イベントをやりたいと思っている人が多いので、一緒に活動できる仲間も増えました。暮らしていて本当に楽しいです。子どもの医療費が中学校卒業まで無料なのも助かっています。
  ルナさんー車がないと生活できないことです。私は車の免許すら持っていません。バスが1日4本しかなく、松江市に出ようと思うと、片道700円くらいかかります。教育の面では、地域の人と一緒に活動するなど、地域を学ぶ学習は充実していますが、基本的にはオーソドックスな教育しか選択肢がないな、と。学校以外にも学べる場所があることが大切だと思っているので。私も、想いのままに表現できる楽しさを知ってもらえるようなワークショップができたら。そしてその中に色々な大人が集まることで、自分の親以外とも触れ合え、学びの場になれたら。子どもたちに様々な選択肢を用意してあげることは、今後雲南市でできるのではないかと信じています。
紀之さんー子どもを自然の中で育てたいという思いがありましたが、ちょっと田舎に行き過ぎたかな、と。育てる環境としては最高ですが、親の送迎は必須です。自分が子どもの時には想像できなかったくらい子どもが少なくて、さみしさは感じます。病院も少なく、時間次第では松江市まで行かないといけないときもあります。あとは夏場の草刈りが大変ですね。
  自然にあふれている環境はとても満足しています。子育てイベントのお客さんの多さなどから、雲南市に住んでいる人たちの子育てに関する関心の強さも感じます。雲南市で活動する子育てのグループも多いですね。
自分たちの仕事柄、イベント出店が多いのですが、夫婦2人とも出店していると子どもをどうするか、いつも悩みます。託児を行うグループもありますが、お金がかかるので…。同じような悩みを持っている人も多いはずです。もう少しいい方法があれば、とは思います。
  同じ島根県の市町村でも、雲南市は特にオープンな地域だと感じます。皆さんが「よく来たね」とあたたかく迎えてくれます。はじめは出雲市に住んでいましたが、雲南市に引っ越してから友達が増えました。どんどん人と人がつながり、友達の輪が広がっていきます。古いものを大切にし、それを若い世代に伝えることが大切だと考えていますが、雲南市は若い世代にしっかり伝えているな、と感じます。その大切にしている伝統に、移住者が入っていっても拒まれないということもすごいと思います。今、移住者の女性複数名で神楽をまわせてもらっています。守るべきものを守りながら、新しいものを受け入れている。なかなか難しいことだと思いますが、雲南市はそれができる場所です。
また、雲南市には様々な働き方をしている人がいます。自分が働きたいように働き、自分の時間をつくれるので、自分の意思をしっかりと持って生活できます。都市部に住んでいる方で、そんな働き方を考えておられる方には、雲南市はチャレンジしやすく住みやすくてオススメですよ!「市役所の方に助けられた」と言える地域って本当に貴重だと思います。雲南市は本当にいいところです。



 
永瀬紀之さん・ルナさん
2016年3月に神奈川県からIターン
<2019年9月取材>