金築莉那さん



雲南市への移住のきっかけを教えてください。

松江市出身ですが、幼少期には祖父母が住む雲南市の家で暮らしていたこともあり、雲南市は思い入れのある場所でした。子どもの頃から島根県内の市町村をめぐるスタンプラリーに参加するなど、とにかく島根が大好きで、島根のために働きたいと漠然と思っていました。大学生の頃、県外から島根へ移住して活躍している地域おこし協力隊の方々と出会い、島根を好きになって移り住んだ人がいること、地元ではない島根の地域課題解決に向けて活動しているという事実を知り、「地域おこし協力隊のような人たちが増えてほしい。島根へ移住を考えている人たちをサポートしたい。」という明確な目標ができました。
支援をするには自分自身も移住者の経験を積みたいと考え、縁もゆかりもない愛知県の小さな村へ単身移住し、移住者が興味関心を持ちそうな農業・狩猟・空き家活用を学びました。愛知県での暮らしはとても充実していて、もう少し学びたかったのですが、雲南市に住む祖父の急逝がきっかけで島根へ戻る決断をしました。なぜ実家がある松江市ではなく雲南市に孫ターンしたかというと、大学生の頃に雲南市の起業支援『幸雲南塾』に参加していたことが大きな理由です。移住者をサポートしたいと思いいくつかの市町村に連絡したところ、雲南市はすぐに動いてくれて、私のプランを応援してくれました。島根に帰るなら移住前から自分の夢を応援してくれた雲南市へ戻りたいと思って、愛知県から雲南市の祖母の家へ孫ターンすることになりました。そして、雲南市で移住支援ができたらいいな、と考えるようになりました。

 

仕事はどうやって決められましたか?

祖父の四十九日の時に「松江ではなくて雲南に帰りたいと思っている」と世間話程度に親戚へ話したところ、いつの間にか話が進んでいったのか、幸雲南塾時代にお世話になった雲南市役所の方から電話があり、「移住定住支援がしたいならいい仕事がある」と提案してくれました。それが今も続けている定住企画員の仕事でした。幸雲南塾時代の縁が、まさかこんなところで繋がるとは思いませんでした。
移住する前の支援はどこも手厚いけれど、移住した後の支援はやっていないところが多い。だけど、移住した後の方が大変で、支援を必要としている人が多いのではないか。自分自身も移住の経験をして、そんなことを感じていたので、定住企画員という仕事はまさに自分がやってみたい移住サポートの形でした。

 

住まいはどうやって決められましたか?

孫ターン当初は祖母の家の離れに住んでいました。離れは築80年以上の古民家で、お風呂がなく、隙間風や虫との戦いで大変でしたが、それも田舎暮らしの醍醐味として楽しんでいました。子どもが生まれたことから、現在は祖母の家から徒歩3分程度のアパートに引っ越しました。たまたま親戚がオーナーのアパートだったので、空室情報もすぐに教えてもらえて、すんなりと入居できました。引っ越しても祖母の家とは同じ自治会内の距離で、一緒にご飯を食べたり、時には子守りをお願いしたりして、とても助かっています。

 

雲南市に暮らしてみた感想を教えてください。

不便なイメージがありましたが、暮らしてみると全く不便ではなく、正直驚きました。スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター、病院もある。だけど自然も豊か。四季を五感で感じられる。とても暮らしやすいまちです。
松江市での生活が長かったですが、どこか雲南市は“ふるさと”だという気持ちがあったので、念願叶って雲南市で暮らせていることに喜びを感じています。幼い頃から祖父の背中を見て育ってきました。祖父のように地域を愛し、地域のために生きている人に憧れ、私もそんな存在になりたいと思いながら生きてきたので、地域の人同士で頼ったり頼られたり、そんな関係性がとても心地良いです。

 

移住してみて困ったことはありませんか?

子どもの頃は毎週末のように訪れている場所だったので、大きなギャップはありませんでした。あえて困ったことを挙げるとしたら、ゴミの分別ですかね。田舎って結構分別が大変で。未だにわからなくてポスターを確認したりしています。あとは公共交通機関があまり充実していないので、お酒を飲みにいくのに不便です。家が飲食店のある場所から離れているので、本当はお酒が飲みたくてもいつもドライバーになってしまいます。とは言ってもどれも想定内のことだったので、さほど困っていません。
狩猟免許を持っている関係で、地域の方から鳥獣被害に悩んでいる話をよく聞きます。私が住んでいる地域はイノシシやサル、さらにクマも出没するので、農業被害だけでなく人的被害も心配になります。

 

雲南市の子育て環境はどうですか?

初めての出産を雲南市で経験したので比較対象がありませんが、子育てしやすい環境だと感じています。何よりも地域の方が子育て世帯に優しいです。買い物をしていても、イベントに参加していても、どこへ行っても声をかけてもらったり気を遣ってもらったりして、少しでも負担なく過ごせるよう考えてくれます。地域全体で子育てをしているような感覚です。
雲南市立病院で出産しましたが、先生や助産師さんが優しいのはもちろん、リニューアルしたばかりの病院だったので環境もよく過ごしやすかったです。何より嬉しかったのは、毎日木次乳業のパスチャライズ牛乳が飲めました!最近は出雲市や松江市で人気の産院もありますが、出産後も子どもの健診や予防接種などスムーズに行うことができたので、私は地元の総合病院で産む選択をして良かったな、と思いました。

 

これから地方へ移住を考えている方にメッセージをお願いします。

移住をしてみて1番感じたのは、自分自身の切り開いていく力や動いていく力が必要だということです。行政の移住支援はもちろん手厚くとても助かりましたが、人間関係の構築・住まいや仕事の決定・病院やスーパーなど生活環境の開拓・行政機関への申請などは自分でやらなくてはいけません。当たり前のようなことですが、どこの自治体も移住支援が手厚いので「移住者だし何でもやってもらえるかも」と、移住したことに対してどこか特別さを感じ、当たり前を忘れてしまうこともあります。行政の移住支援をうまく活用しつつ、自分の生活は自分で作っていく感覚を持っていると、移住後もスムーズに心豊かな暮らしができると思います。
ひとつのまちだけでなく何ヶ所か検討先をめぐり、良い面だけでなくマイナス面もしっかり聞いた上で、「ここで長く暮らしたい」と思える場所を見つけてください。そしてその検討先の中に雲南市が入っていると、イチ市民としてとても嬉しいです。定住企画員としては、雲南市への移住のお手伝いを行いますので、ぜひご相談ください!


 
金築莉那さん
2018年3月に愛知県からJターン
〈2023年12月取材〉