足立志帆さん

 

 

地方への移住を考えたきっかけを教えてください。

幼い頃から、祖母に会いに島根県へ行くことが好きでした。おばあちゃんっ子だったこともありましたが、島根の雰囲気や景色に子どもながらに惹かれ、いつか島根に住みたいと夢見ていました。
高校生になり、自分の生活が勉強や部活、進路、多感な時期でもあり毎日が目まぐるしく過ぎていくようになりました。そんな時、島根の祖母の家でぼーっと過ごしている時間がすごく新鮮で、セミの鳴き声やポカポカ陽気の天気など、大阪では煩わしいと感じていたものが心地いいなと感じ、日々の暮らしの感覚が変わった気がしました。その感覚が忘れられず、「私は島根に住む!」と強く思うようになり、進路先も島根県しか考えられなくなりました。
大学では島根出身の夫に出会い、2人の夢は「夫婦2人で島根に飲食店を開くこと」になりました。その夢のためなら大阪での厳しい修行時代も乗り越えられましたが、夫が単身赴任の期間が伸びたこともあり、ちょうどタイミング的に移住を現実的に考えられるようになった1年半前から島根への移住に向けて動き出しました。

 

雲南市への移住の決め手は何でしたか?

島根に住むと決め、雲南市以外にも様々な地域を見学しました。雲南市の印象は、雰囲気や風景に惹かれる地域だな、と。田舎の風景って一括りにはできず、海がきれいな地域があれば山がきれいな地域もある。雲南市の風景は私が好きな田舎の風景に近く、こんなまちで暮らせたら、と思っていました。
また、定住企画員が親身になって話を聞いてくれて、住まいや仕事など隅々まで対応してくれたことも大きかったです。最初は単身での移住だったので、他の地域では1人で暮らすイメージが想像できなかったのですが、雲南市で出会った皆さんの人柄もあり、「雲南市なら暮らしていけそう」と感じました。

 

仕事はどうやって決められましたか?

長年調理の現場に携わっていたので野菜や肉の生産に興味を持ち、移住先では第一次産業に関わりたいと思いました。そんな思いを定住企画員に伝えたところ、『農事組合法人槻之屋ヒーリング』を案内してもらいました。話を聞いてみると農業だけでなく猪の捕獲・解体も行っているということで、ここで働いたら田舎で生きていく力が身につきそうだと感じ、ふるさと島根定住財団の産業体験制度を使って1年間農業研修を行いました。
現在産業体験は終了し、先輩移住者の鹿糠さんが営む『kanuka park』で働いています。移住前に定住企画員から、槻之屋ヒーリングでの体験を卒業した移住者として鹿糠さんを紹介してもらったことがきっかけで知り合いました。kanuka parkでの仕事は、料理やデザイン、事務、猪の解体、地域との交流など、今まで経験してきたこと全てを出し切る業務を任せてもらえて、さらに鹿糠さんから学ぶことが多く、自分の可能性を広げられる機会にもなっています。

 

住まいはどうやって決められましたか?

空き家に住みたいと考えていましたが、定住企画員から修繕や草刈りなど、女性1人での空き家暮らしはなかなかハードルが高いと助言してもらったこともあり、移住当初は公営住宅で生活していました。実際に移住前に空き家を案内してもらいましたが、私1人ではなかなか管理しきれない物件ばかりだったので、公営住宅からのスタートでよかったなと今振り返っても思います。
公営住宅に住みながら空き家を探していると、知り合いから状態のいい空き家バンク物件の情報を教えてもらいました。夫が雲南市に移住するタイミングだったことと修繕が必要ない物件だったので、入居を決めました。

 

雲南市に暮らしてみた感想を教えてください。

雲南市で暮らしているとどんどん人とのつながりが広がっていき、そのつながりからやりたかったことや夢だったことがあっという間に実現しました。「こんなことやりたい」と言えば、誰かが頼れる人を紹介してくれる。雲南市の人の魅力を改めて実感する日々です。
関西での生活は、忙しさに追われたあっという間の1年で、季節の移り変わりなど感じずに生きてきました。春の中でも様々な変化があること、嫌いだと思っていた夏が好きだと気づいたことなど、季節のちょっとした変化を感じる瞬間がとても贅沢で、大切な時間です。ふと立ち止まること、無駄だと思うようなことがどれだけ大切か。新たな発見や人との出会いがあったり、物事が冷静に考えられるようになったり、深呼吸して心が落ち着いたり。関西では立ち止まることが怖かったように感じます。

 

移住してみて困ったことはありませんか?

事前に「こんなことで困るだろうな」と想像していたこともあり、そこまで困ったことはありません。あえて言うなら、パソコンが壊れたときにすぐ直してくれる場所がなかったり、空き家暮らしでは草刈りや虫退治、ネズミ退治が大変だったり、家の畑にサルが出て作物に被害が出たり。ある程度想像していたことです。ただ、雪は甘く考えていました。車が溝に埋まって動かなくなったり、家の裏で雪崩が起きて窓を突き破ったり…。「雪に気を付けて」とさんざん言われていましたが、想像以上でしたね。

 

雲南市の起業支援はどうですか?

今年度、雲南市のスペシャルチャレンジに申請します。スペシャルチャレンジは、地域に必要な仕事の起業創業を支援してもらえる、雲南市独自の制度です。現在考えているのは、乾燥した野菜をパウダーにして、まずはシフォンケーキに混ぜ込むことでパウダーの活用方法をアピールするプランです。生産者にとって廃棄するものと思っている野菜がパウダーとして生まれ変わり、お金になるということがわかれば、雲南市の生産者たちがもっと頑張れるきっかけになるのではないかと考えています。パウダーを混ぜ込むことで彩りが加わるので、例えば介護食や離乳食も見た目からもおいしく感じられると思います。スペシャルチャレンジの制度は私の背中を押してくれました。資金も使いやすく、またプランをブラッシュアップしてくれるなどサポートも手厚いので、ゼロから始める人にとってはとても助かります。

 

これから地方へ移住を考えている方にメッセージをお願いします。

観光で訪れたときの思い出や田舎への憧れだけでは暮らしの部分が見えません。何気ないところに暮らしを感じることがあるので、住みたいと思う地域、気になる地域には実際に訪れて、自分に合った地域なのかを考えてみてください。雲南市の体験プログラム「雲南つながる体験」など、行政の移住体験制度を積極的に活用することをオススメします。特に雲南市は頼れる定住企画員がいるので、心強いですよ。移住を悩んでいるなら、まずは行動!です。実際に行ってみて、しっかりと暮らしを感じとってください。


 
足立志帆さん
2020年4月に大阪府からIターン
<2021年6月取材>