雨のことさえ忘れる陽気な朝7時
6月某日、小雨の降る梅雨らしい日のこと。久野地区下組自治会の自治会旅行が行われた。雲南市に多くの知人ができたが、未だに「自治会旅行」なるものが行われている自治会は、ほかに聞いたことがない。毎月の自治会費で積立が行われ、家庭から1名無料で参加できる、地区の日帰り修学旅行のようなものだ。総勢25名程度、6割が高齢者以上の大人の修学旅行。今年の行先は、広島県の安佐動物公園とTHE OUTLETS HIROSHIMAだ。なかなかハイカラな旅先である。
その日は、朝6時50分に地区のセンターに集合し、7時に出発。田舎の朝は早いのだ。小雨に打たれる中、奥出雲観光のバスに皆で乗車する。バスガイドは自前で、自治会の総務が担当する。片道3時間弱のバス旅に向けた自治会長の挨拶が終わると、早速バスの中には焼酎やさきイカの香りが充満し、世間話が飛び交う。呆れたように「動物園に着くまでに出来上がってしまうで」というばあちゃんもビールの栓を抜いていた。雨のことも忘れる、陽気な朝7時である。
早くも2度目の宴会に満足げな大人たち
さて、1件目の目的地、広島県広島市にある安佐動物公園に到着する。日帰りの弾丸旅ということもあり、ここであまり長く時間が確保されていない。入場してすぐ、大喧嘩をするアヌビスヒヒたちに大歓迎を受け、ほろ酔い気分の大人たちは歓声を上げる。その後は自分の見たい動物のゾーンを目掛けて、三々五々散策を開始した。私はというと、キリンやライオンの迫力に圧倒され、だらけきった熊の姿に癒された。
原爆ドームの目の前に立地する、広島の宿相生にて昼食会。行きのバスに次ぐ2度目の宴会なわけで、たらふく食って飲んで、一同満腹だ。その後はTHE OUTLETS HIROSHIMAでのショッピングに向かう。ここでは自由行動。集合時間になり、バス乗り場で再開した時には、それぞれに違うショップの紙袋を持ち意気揚々とバスへ飛び乗るのであった。
この旅の行先はさほど重要ではない
帰り道はというと、これまでとは一変し、皆おやすみモード。朝からビールや焼酎を流し込み、動物園やアウトレットを散策した身体は疲れ切っていた。寝息の音がバスを包み込む。きっと心地の良い疲れだったに違いない。久野に着いた時には、皆とても清々しい顔でバスを降りた。一部のメンバーは、今回の旅の思い出話をアテに地区のセンターで本日3回目の宴会を執り行うそうな。大変に元気なことである。若手に数えられる私はというと、早々にギブアップ。家の布団が恋しかった。
さて、私は自治会旅行に行くのは2回目だ。旅行については強いお誘いによって、やむを得ず参加している部分もあった。しかし、普段話さぬメンバーと話すことができたりすることで、自分もこの地区の仲間であることを強く感じることができた。今では、行ったことを良かったと感じているとともに、来年の旅行が楽しみでさえある。きっとこの旅行は、行先はさほど重要ではないのだろう。地区の皆で時間を共にし、話をしながら「旅をしている」ということが重要であり、バスの中が大切な交流の時間となっているのだ。
【ライター紹介】
ぽんぽこ仮面。京都府与謝野町出身、9年間東京で過ごした後に雲南市へ。
お風呂すき。サウナすき。キャンプすき。
毎日わくわくした大人でいたい教育業界の人。