起きた瞬間から、胸が高鳴ってやまない。
ドックンドックンと鼓動が鳴る。
最早、我輩はアドレナリンの塊と化していた。
ついに来た。
この日が。
ついに来たのだ。
10月1日が。
昨日の雨が嘘かのような秋晴れだ。
何かがおかしい。
戦士たちでごった返していると聞いていた。
駐車場の数が足りなくなるかもしれないと聞いていた。
駐車場には、私のハスラー、ただ1台のみである。
どうしたことか。
戦士たちの姿はどこか。
日にちに間違いはない。
場所にも間違いはない。
嗚呼、どうしたことか。
前日に降った雨でできたグラウンドの水溜まりが、虚しく波打っていた。
一度、家に戻り、深呼吸をした。
そして、お隣の家のおばあちゃんに問うてみた。
「きょ、今日の運動会って…」
「ああ、なくなったみたいだねえ。昨日の雨でグラウンドがぬかるんでいて危ないからねえ。12時から下組のみんなで慰労会やるから、ご飯食べにおいでねえ。」
「ああ、あはは、そうですよねえ、危ないですよねえ。ご飯ありがとうございます。また後で。」
「はいはい、また後でねえ。」
大変なことである。
中止であったようだ。
全く、知らなかったのである。
聞いたところによると、地域の有線放送で、
前日には中止の放送がされていたようで、
我輩がムンムンと意気込んでいた昨晩中には、
皆、運動会がないことを知っていたようだ。
有線放送の機械を我輩は有していなかった。
盲点であった。
悔やんでも、下を向いていても仕方あるまい。
よくよく考えれば当然のことでもあるのだ。
昨日は土砂降り、グラウンドは相当にグズグズ、
ベテラン戦士の多いこの地域では、
戦士たちのケガには配慮が必要である。
そりゃもう当然中止にもなろう。
我輩は気を取り直した。
照準はこの後の慰労会へ。
はて、運動会もなかったのだが、何の慰労なのか。
いやはや、そこは問うてはいけないところだろう。
いざ、慰労会の場へ行ってみると
どこにそんな人がいたのか、40人もの戦士たち。
婦人部の皆さんが握った握り飯が並ぶ。
そして、お漬物、冷奴、オードブル、ビールに日本酒。
この上ない慰労会である。
聞いたことはないが、
食えば都とはよく言ったもので、
運動会があろうがなかろうが、
人と食らうメシはうまいものだ。
握り飯が心身に染み渡る。
日々トレイニングを行った自分を労い、
また来年の運動会に向けて、鍛錬を積もうと思うのであった。
【ライター紹介】
ぽんぽこ仮面。京都府与謝野町出身、9年間東京で過ごした後に雲南市へ。
お風呂すき。サウナすき。キャンプすき。
毎日わくわくした大人でいたい教育業界の人。