5月の暮れ。
この季節には似つかわしくない暑い日が続く。
庭の草たちが元気よく伸び、家の周りが緑に染まる。
草刈りを余儀なくされた。
雲南に越してから購入した草刈り機。
大きな音を立てて、庭を暴れまわった。
庭はすっきりしたが、
私の心身は疲れ果てていた。
すぐにでも横になりたい気分だった。
しかし、汗でベタつく身体を何とかしたい。
風呂へ行くしかない。
心身を広い湯ですっきりさせたかった。
桂荘へ行こうか。
長者の湯へ行こうか。
はたまた、玉峰山荘まではるばる向かうか。
いや、なんだか今日は未踏の湯に浸かりたい気分だ。
何故か、そういう気分だった。
ふと、あそこだと思いつく。
出雲湯村温泉。
早くいかねばといつも思っていた。
しかし、近場に風呂があり、足が遠のいていた。
今日、ついに行く時だ。
車のエンジンをかける。
さくらおろち湖とも呼ばれる、尾原ダムという巨大ダムを横切る。
あまりの大きさに、いつも漠然とした不安に駆られる。
ただ、今日は違った。
ダムを超えた先には、風呂が待っている。
それを思えば、ダムの景色も違って見えたのだ。
ワクワクドキドキした気分でハスラーを走らせる。
いよいよ、到着。
斐伊川中流のすぐそば。
趣あるその佇まい。
夕暮れ時に灯る優しいオレンジのライト。
ポツリと立ち尽くす赤いポスト。
その景色を見た途端に、
疲れていたはずの身体がウキウキしだす。
代金を支払い、脱衣所へ進む。
年季の入った通路が嬉しい。
「うおお…」と自然と声が出てしまう。
扉を開けたその先には、
深めに溜められた湯と、シャワーのない洗い場。
桶に湯を汲み、ベタつく身体を洗い流す。
身体が喜んでいるのがわかる。
そして、湯船へ。
ゆっくり肩まで浸かっていく。
上を向いていないと、鼻まで浸かりそうなほど、
深めにはられた湯が今日は嬉しい。
全身で柔らかい湯を感じる。
露天風呂は、川の目の前。
良き湯と、この上ない景色を前に、
心身の疲れはどこか彼方へ消え去っていた。
ゆっくりゆっくり湯に浸かり、
今度は気持ちの良い汗が額から湧き上がる。
その汗を流して、外へ出る。
湯上り。
少し贅沢をして、ノンアルコールビールを頂く。
川を眺めながら飲むのは格別だ。
火照った身体を優しい風が包んでくれる。
川のせせらぎの音が脳内をゆっくりと翔ける。
立ち上がる勇気が出ないくらい心地よい。
こんな贅沢はなかなかない。
しかし、こんな贅沢が雲南の日常にはある。
###温泉情報###
■出雲湯村温泉 公衆浴場 元湯 漆仁の湯
所在地:雲南市木次町湯村1336
泉 質:アルカリ性単純温泉 源泉100%かけ流し
備え付:固形石鹸のみ
備 考:家族風呂もあり
###余談###
ぽんぽこ仮面は風呂が好きすぎるあまり、
この5月にサウナ・スパプロフェッショナル資格を取得
【ライター紹介】
ぽんぽこ仮面。京都府与謝野町出身、9年間東京で過ごした後に雲南市へ。
お風呂すき。サウナすき。キャンプすき。
毎日わくわくした大人でいたい教育業界の人。