雪をしばきたい。
そんな怒りも虚しく、しんしんと降り積もる雪をどうにかしばきたい。
早朝5時半。
雪の降り積もる中、僕はスコップを片手にたたずんでいた。
先制攻撃。先手必勝。
まずはスコップで降り続く雪をスラッシュする。
ビュン!!!
スコップは空を切る。当たり前である。
一粒一粒をしばくことは難しい。狙いが定まらない。
いっそのこと、積もった雪ごとしばくことにする。
とりあえず雪の山にスコップをぶっ刺す。
とてつもない勢いでぶっ刺す。
ザクッ!!
よし、クリーンヒットや。
しかし、スコップが抜けなくなった。
どこまでもむかつく野郎だ。
まったく僕の攻撃に動じない。絶対僕の方が雪に有効な武器を所持しているし攻撃力も高いはずなのに、
圧倒的『量』で攻めてくる。
あー。さっき雪をかいたところに、瞬く間に雪が。
あー。さっき車から雪を落としたばかりなのに、またフロントガラスに雪が。
ええい!!と、手袋でフロントガラスをなでなでする。
これでは雪をしばくどころか、早朝から雪を愛でるおっさんである。
本当にむかつく。
50センチも60センチも積もりやがって。
朝5時半やぞ。
そうだ。
このでかい機械を動かそう。こいつで徹底的に踏みつける方法があるではないか。
僕は車に乗り、勢いよく雪の山にアタックした。
ずずずずーん…
くっ。すぐに小高い雪の山に車の勢いがせき止められる。
もう一度バックし、勢いをつけ、雪にアタックした。
ボーンッ!!
よしよし。
やっと道が開いたではないか。ははははは。
このまま轍を作って、除雪された公道までの道しるべを作るぞ。
(コブクロの『轍』がBGMで流れてくる。)
車でとにかく前に後ろに縦横無尽に動く僕。
激しい動きに成す術もなく踏みつけられる雪。
この状況。完全に人間様の勝ち。技術の勝ち。テクノロジーありがとう。
そうだ雪。見たか雪。
と思っていた矢先、
きゅるるるるるる‥‥
車が止まってしまった。
おいおいおい。ずるいじゃないか。
もう勝負はついただろう??
あー。これはだめだ。ダメなやつだ。
誰かに後ろを押してもらわないと。
そもそも我が家の車が2輪駆動だから悪いって?
笑わせるんじゃない。
これで4年間、雲南の冬を越えてきたというプライドと誇りがあるんだ。
僕はこの4年間、積雪の道路で停まる度にたくさんの人に助けられてきた。
(迷惑をかけたすべての人に感謝しています。)
その人たちの…その人たちの想いも背負ってここに立ってるんだ!!
だから…絶対に負けられないんだよおおおお!!!
うおおおおおおーーーー!!
きゅるるるるるるるるるるるるっるるるる
ぶーん…
はぁはぁはぁはぁ…
なんとか抜け出せた。この雪地獄という名の絶望から。
そして無事、職場の駐車場にたどり着いた。
想像通り、駐車場も雪原だった。
白線がわからない。見えない。
「わっくわくすっぞぉ!」ってならない。
車を降りてスコップを取り出す。
あーマジで雪をしばきたい。
(おすすめのしばき方を募集します。教えてください。)
あ。そこの移住希望者の方。
移住したら雪の日は、
朝の5時半からこんな激しい戦いを繰り広げることになります。
想像以上のバトル。ダルシムも驚きのバトル。
ブレイキングダウンの比じゃないくらい、雪かきをしてもしても、煽りまくってきます。
多分、ストリートで最強です。
「雪が降るなら寒いですよね~?寒いの苦手で~。」って皆さん言われるけど、
朝から激しい運動をするので半袖になりたくなりますし、
汗でびっしゃびしゃになります。雪が降って寒いな~なんて思ったことないわ。
雲南市は雪の日が一番暑いです。マジです。
夏の夜より暑い。
信じてください。
だから寒さは大丈夫です。
安心して移住してください。
おわり。
※車は四駆が絶対いいと思います。
【ライター紹介】
たにべえ。平成生まれ平成育ち。
2019年春~広島→雲南。
お酒大好き。3児の父。週7バスケのバスケバカ。