空き家を探す

2022年04月26日
たにべえ

KAME

帰宅後の晩酌中にそれを見つけてしまった。
部屋に響く耳障りの悪い音。

羽音だ。

こんな時間にこんなでかい羽音を立てて宙を舞っているのはヤツしかいない。
存在を感じた。感じたということは僕には最後までこいつを処理する責任が発生することになる。
無視をして通常運転の晩酌を続けようと試みるが羽音が気になって仕方がない。

電気の近くを飛び回っている。
明るく部屋を照らす太陽のような証明から垂れ下がる蜘蛛の糸のような「引き紐」。
それに着地しては飛び立つを繰り返している。
夜22時の浪漫飛行といったところか。何の意味があるのかわからない。せめて存在に気付かれることなく息をひそめていればいい。
そうすれば我々にとっても、あなたにとっても干渉しあうことなく平和に暮らせるのだから。



カメムシと人間の非干渉を推進する会 会長様へ


春暖の候 ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。
平素は我々人間の生活圏を脅かすことないようご尽力いただき感謝申しあげます。

さて、普段我々はお互いに干渉しあわないよう協定を結んでいるところではございますが、
未だ末端のカメムシ様に伝わっていないという現状が続いております。
つきましては、先般人間と干渉したカメムシ様と人間の戦いを写真とともに送付いたしますので、
ご確認ください。
 

PM22:00
人間が羽音でカメムシ様に気付く。

PM22:03
羽音が続くため、近くにあったルーズリーフで処理するか悩む。
ガムテープを取りに行くほどではないと思う。
 

PM22:07
やっぱり羽音が続くので満を持してルーズリーフを手に取る。
 

PM22:08
ルーズリーフの先端でつつくも、何度もカメムシ様がお逃げになる。
 

PM22:09
ルーズリーフ1枚では、上空に位置するカメムシ様へ対応することができないため、
大量のルーズリーフを用意する。
 

PM22:11
大量のルーズリーフにカメムシ様がなかなか乗り移らない。
 

PM22:15
人間が晩酌の途中だったことを思い出し、一時戦線を離脱。
カメムシ様は照明のてっぺんで戦略をお考えになる。
 

PM22:18
一時休戦が功を奏し、ルーズリーフにカメムシ様が乗り移られる。
 

PM22:20
無事外界へカメムシ様をお送りする。
 

以上が今回の一連の流れとなります。

今回は良い人間の家であったため、約20分程度で当該カメムシ様を外界へお連れすることに成功しましたが、
必ずしもこういったケースになるわけでなく、体育館や空き家などで仰向きになられ、息を引き取っているお姿を拝見することが近年増えてきました。
我々としてもカメムシ様の魅力的で特徴的な臭いがなければ、蚊のようにパチンとおしとめさせていただきたいところではございますが、
干渉しあわないように協定を結んでおりますので、できるだけ安全に臭いを発せられることなく外界へお連れしているところでございます。

今一度、末端の現場に出ておられるカメムシ様にこの事例を含めお伝えいただき、人間との干渉を控えていただきたくお願い申しあげます。


どうか届きますように。


おわり





 

【ライター紹介】
たにべえ。平成生まれ平成育ち。
2019年春~広島→雲南。
お酒大好き。3児の父。週7バスケのバスケバカ。