山下実里さん
私の場合は、以前から雲南市を知っていたわけでも、地方へ移住したいと思っていたわけでもなく、やりたい仕事を探していたら雲南市にたどり着きました。元々は「受験や就職活動は何のためにするのか?」など、学生のキャリア形成に関心を持っていました。大学4年生の7月には就職・転職支援の人材サービス事業を行う企業から内定をもらいましたが、自分が考えるキャリア形成支援は数より質だったので、東京が拠点でいいのか、同期が数百人いる企業の中で必要な知識を学び、理想の支援ができるのか、など本当にこの企業に就職するべきか疑問を抱くようになり、就職活動をきっかけに改めて自分のキャリアと向き合いました。
そうこうしているうちに大学卒業が近づいてきて、就職や今後のキャリアについて考えていたとき、インターネットで関心のあるワードを検索し、出会ったまちが雲南市でした。雲南市はキャリア教育の取り組みに中間支援組織が入っていることを知り、担当者と話す機会をつくってもらいました。担当者と話すことで、自分が高校生よりも大学生のキャリア形成に興味を抱いていることに気づき、偶然にも雲南市の事業で大学生の学び・実践の環境づくり「雲南コミュニティキャンパス」を推進する地域おこし協力隊を募集していると教えてもらい、雲南市の担当者へつないでもらいました。興味を持つ大学生のキャリア形成に携われる事業だったので、自分がチャレンジするフィールドはここだ!と覚悟を決め、大学卒業目前の3月に初めて雲南市を訪れ、面接を行い、内定をいただきました。地元から離れる不安はありましたが、雲南市訪問時に出会った皆さんはおおらかで自由な考え方をしている人が多く、そんな人たちに囲まれた環境であればやっていけるという感覚がありました。
  移住後3年間は地域おこし協力隊として、雲南コミュニティキャンパスを推進する活動をしていました。雲南コミュニティキャンパスでは、全国の大学生が大学のない雲南市で実践をもとに行動し、インターンシップやプロジェクトの設計など学んでいく環境づくりを行っていました。3年間は本当にあっという間でしたが、とても濃厚な時間で、大学生の成長も、自分の成長も、関わってくれた地域や企業の笑顔も感じられた、かけがえのない3年間でした。
任期満了の3年が経つ頃、このまま雲南市に残るか、奈良に帰るか、とても悩みました。悩みながらも3年間を振り返ってみると、これまでやってきたことのさらなる可能性を感じ、またこれだけ自分がやりたいと思っていることができる環境も少ないだろうと思い、雲南市に残る道を考え始めました。周りの人にも相談し、残る道として考えたのが、雲南コミュニティキャンパスを含めた若者全体のキャリア形成の支援を行う法人の立ち上げでした。“起業する”という経験も、この機会を逃すともう二度としないかもしれない、自分の可能性を試せるチャンスだと思い、「一般社団法人Community Careers」を立ち上げました。起業当初は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、これまで通りの事業運営ができない危機に陥りましたが、オンラインを駆使した今だからこそできる取り組みを行っています。今後、雲南コミュニティキャンパスから更に発展した事業展開を繰り広げていきたいです。
  定住企画員に様々な家を紹介してもらいました。当時、雲南市に移住者向けの家賃助成がなく、家賃の安さ重視で考えていましたが、タイミングもあってかなかなかいい物件に出会えませんでした。最終的に民間アパートに決めましたが、家賃が高く、同じように地域おこし協力隊等の制度を活用して雲南市に移住してきた同世代の女性と3人で空き家を借り、シェアハウスを行いました。現在は、シェアハウスのあとに引っ越した公営住宅に住んでいます。私が住んでいる公営住宅には、自治会があります。自治会があることで住んでいる人の顔が見え、近所の方に暮らしの困ったことなども相談しやすく、とても暮らしやすいです。移住当時の民間アパートのことを考えると、家賃もお手頃で助かっています。
  雲南市に暮らすことで一番楽しみにしていたことは、雪を体感できることでした。私の地元では積雪することはないので、冬が本当に待ち遠しかったです。移住1年目はシェアハウスメンバーでかまくらを作りました。ですが、ここ2年間は積もる量が減り、雪を楽しむ機会も減った気がします。
初めて雲南市を訪れたときは「田舎だな~」と思いましたが、実際に暮らしてみるとそこまで不便さを感じません。出雲市や松江市にもすぐ遊びに行けて、山にも海にも行けるというアクセスの良さを実感しています。不便ではないですが田舎ではあるので、アウトドアが気軽にできたり、自然の風景を楽しんだりと、リフレッシュできる要素があふれています。
地域の皆さんが飲みに誘ってくれることが多く、地元住民しか知らないようなディープなお店を知れたり、困ったことを気軽に相談したりできて、とても楽しいです。女性単身で移住してきたからか、地域の皆さんはいつも気にかけてくれて、いつの間にか雲南の父母がたくさんできました。
  仕事柄、大学生と関わる機会は多いですが、雲南市出身の同世代の若者と関わる機会は少ないです。移住者は同世代も多いですが、もう少し地元の若者とも関わる機会があれば、と思います。雲南市に移住して一番衝撃的だったのは、カメムシの量です。ただ、カメムシが話のタネとなり、撃退法を教えてもらうなど地域の方とコミュニケーションが生まれました。今の住まいに引っ越してからはあまり出会わなくなったので、住むエリアによって虫との遭遇率が違うことも学びました。
  公的な支援はもちろんですが、それ以上に1人ひとりの支援がとてもうれしかったです。話を聞いてもらって、アドバイスをしてもらって、時には一緒に悩んでくれて。そんな存在が私の心の支えになっていました。そんな皆さんからのサポートがあり、創業支援「幸雲南塾」への参加を決意しました。頼れる人たちからの支援が背中を押してくれて、公的支援がアクセントとなった、そんなサポートをしてもらえたと思っています。
  よく田舎はスローライフなんて言われますが、のんびりしているかというと、そうではない。むしろあわただしい日常を送っています。ですが、仕事でも地域でも、この土地での“自分の役割”を自分なりに感じられる暮らしができています。人の想いがダイレクトに伝わるので、それがしんどく感じるときもあるし、うれしさや楽しさを感じるときもある。地方の暮らしには喜怒哀楽すべてがつまっているからこそ、生きがいを強く感じます。
都会では当たり前にあるものが、地方では当たり前ではない。便利な都会よりも、なるようにならない地方の方が、目の前のことを必死に取り組んでいる人が多いです。そんな人たちと一緒に働いているこの環境は、さらに自分を成長できる場所だと思います。そういう田舎暮らしを求めている方と、一緒に雲南市で暮らせることを楽しみにしています。


 
​山下実里さん
2017年4月に奈良県からIターン
〈2020年6月取材〉