後藤礼子さん
出雲市出身で、実家はお茶屋さんを経営しています。子どものころはお茶に興味を抱くことがなく、高校卒業後に島根県を離れ、関西で働いていました。元々環境問題に興味があったこともあり、プライベートで動いているうちに様々な出会いがありました。その中でも、自然農でお茶を栽培する農家さんは頻繁に手伝いに行く関係となり、元々興味のなかったお茶にどんどん惹かれ、「お茶っておもしろい!もっとやってみたい!」と思うようになりました。同じころ、お茶とは別に野草についても学んでいました。そこで食べられる野草はすべてお茶になるということを聞いたことがきっかけで、野草と茶葉をブレンドしたお茶を商品化しました。ただ、野草を集めようと思うと関西ではなかなか大変で、「これは地元の方がやりやすいのでは?」と思うようになりました。
  島根県内で、野草の採取がしやすい場所であれば、移住先はどこでもいいと思っていました。ある日知り合いの紹介で、安心安全の食の提供にこだわる雲南市の夫婦が営んでいる『宮内舎』を紹介され、私の「島根でお茶を作りたい」という思いを話したら、「雲南市で一緒にやりませんか?」と声をかけられました。島根を離れて20年ほど経っていたので、雲南市についてはそこまで詳しくない状態でしたが、宮内舎の紹介でふるさと島根定住財団の事業を活用できるとのことだったので、「雲南市へ移住しよう!」と決意しました。
とはいえ雲南市の情報が全くわからなかったので、大阪で開催されていた『しまねUIターンフェア』にも参加し、情報収集しました。その後、定住企画員に紹介されて移住体験プログラム『うんなん暮らし体験』(※現在は『雲南つながる体験』)を利用し雲南市を訪れました。風景や人に惹かれ、「いいところだな。ここでやっていきたいな。」と感じました。
  『かみや園+』という屋号で、番茶と野草茶をブレンドしたお茶を販売しています。野草茶と聞くとあまりイメージしにくいと思いますが、何種類かの野草と番茶をブレンドしているので、とても飲みやすくなっています。お茶にしても野草にしても、収穫から加工まですべて自分1人でしようと考えていましたが、なかなか1人ですべて行うのは難しく、お茶の製造は、雲南市加茂町でお茶の栽培・加工を行う砂子原茶業組合とともに行っています。野草は収穫から加工まで1人で行っています。
  1軒家に住みたいと思っていたので、定住企画員に空き家バンクの物件を紹介してもらいました。室内犬を飼っていたので、賃貸の空き家で犬が飼える物件は少なく苦戦しましたが、タイミングよく数ヶ月前に退去されたばかりの状態のいい物件を案内してもらい、「ここに住みたい!」と思いました。その物件が、現在の住まいとなっています。
  今住んでいる地域は特に移住者が多いこともあり、地域の方が移住者の受け入れに慣れているので、皆さん優しく、困ったときには色々と助けてくれます。雲南市は移住者同士の集まりが頻繁にあるなど、移住者のネットワークがしっかり構築されているので、移住当初からさみしい思いはしませんでした。
  空き家に入居すると自治会のお付き合いがありますが、自分が想像していたより自治会の活動が多くてビックリしました。常会や溝掃除、草刈りなど…。田舎だからのんびり暮らせると考えている人もいるかもしれませんが、田舎は割と忙しいです。ただ、自治会活動をすることで地域の美しい景観を守っているので、お世話になっている地域のためにもやるべきである活動だと感じます。
移住1年目は大雪で大変でしたが、あの大雪を乗り越えた今、雪で困ることは少ないです。移住してすぐに大雪を体験しておいてよかったです。
  移住前から事業の方向性は決まっていましたが、すぐに事業展開していくほどの生活基盤をつくる自信はなかったので、ふるさと島根定住財団の事業『地域づくり情熱人支援事業』(※現在は廃止)を活用し、月12万円の助成金をいただきながら2年間活動できたことは大きかったです。雲南市に引っ越してきてすぐに起業し、半年後には商品化できました。 都会は夢を掴む場所というイメージがありますが、ある意味田舎の方が夢を掴めるチャンスが多いと思います。特に雲南市は出会いも多く、資源が豊かであるなど、まだまだ可能性がある場所です。支援制度も整っているので、やりたいことがある人はカタチにしやすいのではないでしょうか。とはいえ、やりたいことをカタチにできるかどうかは、自分の気持ち次第です。支援制度や人との出会いは、自分の強い思いがあれば上手くつながっていきます。私は移住当時にたまたま自分の考えに合う支援制度がありましたが、現在『地域づくり情熱人支援事業』は廃止されています。住まいもたまたま希望通りの家が見つかりました。そういったタイミングが重なり、移住を決意できました。移住するタイミングはとても重要ですよ。



後藤礼子さん
2017年10月に京都府からIターン
〈2020年9月取材〉